マリア・カラス

マリア・カラス

アントニエッタ・ステッラの名は知らなくても、オペラファンでなくても、マリア・カラスの名は世界にとどろいている。まさに20世紀を代表するプリマ・ドンナだ。
舞台栄えするあの面構え!(敢えて面構えという)、他を圧倒する声と迫真の演技力、オペラのために降臨したミューズである。
今年は没後30年とのことで来年又、映画が封切られるらしい。ただ私はカラスに似た女優がいくらいい演技をしても、あくまでも映画的に脚色して美化しているカラスには…たとえば以前封切られた「永遠のマリア・カラス」等も決して満足しなかった。(そこにいくと先日見たエディット・ピアフは彼女の人となりというよりも主役のマリオン・コティヤールの熱演がよかった。)実在の人物を題材とした映画にはよくあることだが・・・、いつもがっかりする。
見るならカラスの生き様というよりは「歌い様」のドキュメンタリーを見たい。

あの独特な声とヴィブラート、まず美声ではないのだ。
音色は完全なるアルト、メッツォ・ソプラノなのにハイソプラノのレッジェーロのテクニック!
低音部の豊かな、ドスの効いた地声からコロラテューラの最高音まで見事なチェンジとテクニックで(音程が決して崩れてない)歌いこなす。そして他にない表現力の凄さ!又声量の凄さといったら、ライヴ版だがマリオ・デル・モナコとの共演の「アンドレア・シェニエ」ではあの黄金のトランペット!マリオが最後の2重唱の最高音がカラスにかき消されている。(もちろん、歌は素晴らしいが)

カラスのキャラクター的に共感できる役柄は「マクベス」のマクベス夫人である。ビルギット・ニルソン(素晴らしい私の大好きなソプラノの一人だ)の同役もいいが私はカラスに軍配を上げる。

ただ、私はあれほどの幅広いレパートリーのヒロインを演じているが、あの独特の声で歌われる他の…例えば「トロヴァトーレ」「仮面舞踏会」「ボエーム」「バタフライ」というポピュラーなヒロイン役は劇的な素晴らしい表現力は認めるが、音色的にイメージできない。

To be Continued!