レナータ・テバルディ

レナータ・テバルディ

マリア・カラスと'50年代のオペラ界を二分した名ソプラノ。なんといっても素晴らしい美声だ。
かの巨匠、アルトゥーロ・トスカニーニから[天使の声]!と賞賛されたソプラノである。
ライバル視されている二人だがカラスは圧倒的な表現の凄さ、テバルディは圧倒的な声の美しさ、それでいて音楽的な素晴らしさは両者引けをとらない。
私はテバルディは(ドラマティコ)リリコ・スピントの声質だからヴェルディも得意である。「アイーダ」、「オテッロ」みな素晴らしいが、ヴェルディのヒロインよりもプッチーニのヒロインの方が好きだ。
低声(胸声)も豊かなのだが、アントニエッタ・ステッラのソプラノなのに!あの美しい低声にはかなわない。ヴェルディのヒロインの場合は特に強い胸声を必要とする低いところが多い。「仮面舞踏会」のアメーリアのアリアなどはあの美声ゆえに低い部分がやや力みすぎの感がある。
ところがプッチーニになるとその美声が100%生かされている。カラヤンお気に入りのミレッラ・フレーニの定評ある「ボエーム」のミミ(私も好きだが)よりも細かなニュアンスの美しさも十分出されている。「マダム・バタフライ」「トゥーランドット」「マノン・レスコー」然り。

ともあれ、懐古趣味だからではなくカラス、テバルディ、そして大好きなステッラ、もちろんソプラノだけでなく'50年代に活躍した名歌手(デル・モナコバスティアニーニetc.あ〜、たくさんの素晴らしい名歌手たち!)に比べると、時代が新しくなって来れば来るほど、ヴィジュアル的にスマートになってもオペラ歌手本来の風格、品格がだんだん小粒になってきた感は否めない。