ドイツオペラvsイタリアオペラ

エイザベート・シュヴァルツコプフ

先日、芸術劇場で「ばらの騎士」を見た。
このオペラで思い出されるのは、あのドイツの名ソプラノ、エリザベート・シュヴァルツコプフの元帥夫人、セーナ・ユリナッチのオクタヴィアン、アンネリーゼ・ローテンベルガーのゾフィーカラヤン指揮の映画「ばらの騎士」が当時日比谷公会堂で上映されていて見に行ったのだが、途中でフィルムが切れたのか上映不可能になって中途半端で帰ってこざるを得なかったことである。

シュヴァルツコプフは決して美人とは思わないが、非常に気品ある容姿で格調高いこの役が、又コスチュームがぴったりであった。(先日のドレスデン歌劇場のコスチュームはやはり簡素化?されている・・・不満。)もちろん歌と演技は言うまでもなく素晴らしかった。元帥夫人の心のひだを声の陰影であれほど繊細に演じ分けられるのは彼女だけではないか?
ドイツオペラはイタリアオペラに比べてかなりの演技力が必要ではないかと思う。リヒャルト・シュトラウスモーツァルトヴァーグナーオペレッタも然り。

ドイツオペラは歌い手の魅力よりも(いや、シュワルツコプフは素晴らしいカリスマ性だが)演技と声のある程度のバランス、アンサンブルが必要だ。ドレスデンの歌い手も演技力がしっかりしている。(そういえば日本の初々しいゾフィーを演じていた森麻季、彼らと並んで十分勝負できてる!たいしたものだ。)だから今の舞台装置や衣装、演出で抵抗のあるものはあってもそれほど懐古趣味にはならない。
その点イタリアオペラは圧倒的に声の存在感、歌い手の魅力である。カリスマ的存在の歌い手が多かった50年代所謂黄金時代を髣髴とさせてくれるスターを望んでしまう私は完全にイタリアオペラでは「昔は良かった」・・・になってしまうのである。ア〜ア、又言ってるよ!